pink とは?

pinkは、ShinSuiSha Recordsが年4回発行(現実的には、年1回になってしまっていますが。)を目指すZINEです。

毎号、新進気鋭の作家を特集アーティストとして迎え、アートを中心に、我々が注目する人や表現を紹介していきます。
と、まぁ、そういう雑誌なのですが、そもそもpinkを発行するに至った経緯を紹介することが、よりpinkを理解して頂けるとものと思いますので、そのいきさつをお話させていただきます。

2007年の春、アートディレクター、グラフィックデザイナーである吉田ナオヤが、エレクトロニカバンド、オルガノラウンジとの衝撃的な出会いによりShinSuiSha Recordsを立ち上げました。そしてインディーズレーベルとして、音楽だけではなくあらゆるものを発信していきたいと思い始めます。

その年の秋、吉田は日本画家、十一(トヲハジム)と京都に小旅行に行くのですが、十から「京都は大文字山に登れば、それで全部分かるから。」と言われ、本当はたくさんの名所を回りたかったにもかかわらず、半ば強引に大文字山に登りました。
前日に大阪で左目のコンタクトレンズを無くした吉田は、右目だけにコンタクトレンズを入れ、視野が狭く、アンバランスな視覚のまま、日の落ちてきた大文字山を、勘をたよりに歩を進めました。不思議なもので、日常とは異なる視野だと意識や感覚も日常とは違っていて、まるで自分以外の人間の体を操っているような感覚で、今になってみると記憶も一部抜け落ちていることに気づかされます。
そうして、酔っぱらいのような感覚で、頂上へと辿り着いた吉田は、そこからのかつて長らく都を構えていた街の荘厳な眺めに遭遇してしまいます。彼らがここに都を構えた理由を身体で感じ、十の言う、「大文字山に登れば、全部分かる」という言葉を理解します。その昂ぶった気持ちのまま、もはや、コンタクトレンズが片方しか入っていないという事実は関係なく、両目の視力があっても何も見えないというような、真っ暗闇の大文字山を、文字通り滑り降りた二人は、京都大学前の喫茶店で一服することにしました。

そこで、吉田は十に、10年来思い続けていた雑誌の発行を相談します。ShinSuiSha Recordsから雑誌を出そうと思ってる、と。
大文字山から見た京都の街は、その時代に生き、その街を作り上げた人々の表現の結晶であることは間違いなく、それは、もちろん後世へ生きた証を残したいという想いもあったのであろうが、それよりも、そのとき、それを作りたかっただけで、それを同じ時代に生きる人々に対して表現しかったというピュアな情熱が、こうして今の時代にも残って、我々に語りかけてくるのではないかと思い、自分も今の時代に生きるアーティストたちの表現を、同じ時代に生きる人々に伝える媒体を作りたいと思わせたのです。こうして、我々が良いと感じる、現代を生きるアーティストを特集する雑誌を作り、同じ時代に生きながら、彼らと接する機会の無い方々に、今を生きていることの幸運を感じてもらえる機会を持ってもらえたらと、pinkを創刊することを決めた訳です。

pinkを創刊するにあたり、兼ねてから交流のあった小澤身和子に、一緒に作ってもらえないかと話を持ちかけます。
すると、実は彼女も近々、自分のフリーペーパーを発行しようと考えていたというではないか。彼女は大学院で英米文学を研究しており、周りの文学者たちの原稿を集めた媒体を考えていたのです。そして、その企画意図は偶然にも、吉田のものと同じ方向性を持っており、二人の企画を併せれば、より深みのあるおもしろい雑誌が出来るのではと、いよいよ発行へ向けて動き始めます。

編集素人の我々は、まさに、あの大文字山を片方のコンタクトレンズのみで登ったときのように、勘を頼りに諸々の解決すべき問題(それは主に金銭的な問題であったが。)を解決し、というか、未解決のまま、強引に発行へ突き進みます。文字のプロフェッショナル、コピーライター中田洋之と、編集のプロフェッショナル、綾ヘメンディンガー、そして音楽家、本多裕史を編集部に迎え、ようやく地盤が固まったかのように思えたのだが、相変わらずの手探り状態は続き、今度は、あの真っ暗闇の大文字山を滑り降りたときのように、重力に従順な勢いのまま2008年春、第一号の発行へと至りました。

これが、pink発行の経緯です。

そもそも、なぜ吉田が10年来、雑誌を発行したいと考えていたかというのを自己分析してみると、一つの結論が見えました。
グラフィッックデザインを通して、それは商業ベースのデザインと自己表現的なデザインの両方であったが、平面の印刷物を作るという行為を続けている間に、ある限られた平面での表現を超え、時間やストーリーを持たせたり、あらゆる手法を用いたものも作りたいと思うようになったのです。それの一つの結果が雑誌だということです。

雑誌は、ページを捲るという行為を通して時間を獲得し、またビジュアルだけではなくテクストを持っていることや、本全体の主題を持っていることで、ストーリーも得られます。また、雑誌は複数の平面によって構成されているため、あらゆる表現方法を発揮しやすい性質を持っています。全体を通して、時間と空間、ストーリーと複数の表現方法を持っている雑誌の特性を、平面の世界での総合芸術と捉えていたのだと思います。

このように語ると大袈裟な感じもしますが、つまるところ、ただ単に雑誌を作りたかったということです。そんなpinkではありますが、この雑誌を通して、今を生きるアーティストたちと、彼らの作品と触れ合うことで、皆さんに同じ時代を生きることの幸運を感じていただければ、ただ単に作りたかったという理由だけで作られた雑誌も、ここに存在する意義を獲得出来るのではないかと思います。
なので、読んでください。よろしくお願いいたします。

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